備忘録

マル激全アーカイブス視聴を目指して

#0005_010316_ボス交の功罪と廃止のリスク

#0005_2001年3月16日
経世会が政界から消えることは何をいみしているのか


角福戦争の怨念
 小泉が総裁選出馬を表明し、マスコミもそれに便乗している節がある
 メディアが野中より小泉の方がありそうだ、と感じたか?
 ただ、森首相はおり方と、次期候補の決定方法は握っている
 経世会は次の候補者として担ぐ人がいない
 そんな中、総裁選前倒し論が出た
 森首相としては、今まで経世会にいいように牛耳られたまま、
 多数派工作で落とされることを拒否したのではないか
 自民党は政権維持互助会でしかなく、
 田中角栄が表舞台から降りて、大平、福田、中曽根を
 多数派工作で総理に据えて、権力構造を維持してきた
 しかし、ある種お世話になった部分もあるが、
 後ろからいいように操られて、何かあれば首を挿げ替えられる
 という恨みが清和会、森派に溜まっていたのではないか

・政界(永田町の論理)について
 視聴者の中には、政界の話がちんぷんかんぷんで、
 経世会、清和会などの派閥の名前を言われてもわからないかもしれない
 そもそも自民党内でなぜ派閥が分かれているのか、
 という議論も当然考えられるが、実際にその派閥の論理
 (永田町の論理)が跋扈している以上、避けては通れないだろう

・人材待望論と病巣局在論
 多くの場合、良い人材を待望するか、
 良いシステムを待望するか、二者択一となる
 今、人材がいないとすれば、長い目で見て良いのではないか
 人材に頼らない根本的なシステムを考える良いチャンス
 システム構築には知恵が必要なため、
 市民派の議員に英知が集まるようなシステムを考えなければならない
 それがないと、官僚役人の知恵に劣る政策、法案となる可能性がある
 政策秘書、政策シンクタンク、プロフェッショナルリサーチャーや
 オンブズマン制度が必要となるだろう
 さらには、公正な競争を阻害している記者クラブ制度や再販制度
 宅配制度などをどうするか、という課題もある
 
 佐藤栄作田中角栄、ともに利益誘導型の政治を進めてきた
 誰が主導権を握るのか、ネットワークの質が違ったとしても
 覇権がどこにあったかという違いだけで構造は同じ
 今後、違った新しい政治ができるのか、が問われている
 森が代わったからと言って、何かが変わるのか

・ボス交政治の賛否
 早坂茂三(田中角栄の元秘書)曰く、
 「料亭でのボス交政治は良かった。それがいろいろなシナリオを作って
 全てを丸く治めて、無用なトラブルを最小限に食い止めて、様々な決定が
 できた。料亭政治ができなくなって、この国の政治がダメになった」
 これは半分真実ではないか
 今では、そういうボス交ができる資質の持ち主がおらず、
 料亭政治のような場で決定できる事柄もほとんどなくなっている
 今のところ、ボス交に代わる制度はなく、
 乱闘国会やパフォーマンスに懲りる、ということを経由しないと
 新たな制度は確立しない

経世会的なるもの(裏取引)の廃止に伴うリスク
 今まで水面下で治まっていた問題が表面化して、肥大化する
 その一時しのぎとして、杜撰な(穴のある)法律が濫立して、
 実害を及ぼす可能性が高まる
 特に短絡的で安直な解決策を主張するパフォーマンス
 (タカ派のような言動)に注目が集まってしまう
 しかし、
 政治家がパフォーマンスで票を集める時代を経由する必要がある
 今までは、政治家がパフォーマンスさえできない状態で、
 見えないところで全てが決まっていた
 我々はパフォーマンスの意味が理解できていない
 なぜ、誰が、どういう理由でそういうことを言っているのか
 一旦、パフォーマンスを見て、その後の実効性を各個人が
 見極められるようになる必要がある
 (騙されて学習する必要がある)
 しかし、騙されて負う傷が深いと、簡単に回復できなくなるリスクもある
 そのバランスは非常に難しい

・料亭政治ができなくなった理由
 最近では、密室政治のはずが、参加当事者の口から
 メディアへ情報が漏れてしまっている(自ら喋っている)
 料亭政治ができなくなったのは口が軽くなったからでは?
 これは、関係の複雑性が増して、
 敵が明確ではなくなったからではないか
 抜け駆けにあって不利益を被るという不安から、
 情報戦において、先に仕掛けて優位に立つ、
 という行動をとっている
 ある出来事が起こると、これが一体誰を利するのか、
 ということが以前ほど単純ではなくなってきている
 55年体制、2大政党の時代は、縦割りで敵味方がはっきりしていた
 YKKのような横を横断するものが登場して、わかりにくくなった

・戦後戦中体制の弊害
 これまで40年体制の弊害は様々な議論がなされてきたが、
 近頃になって、その焦点がかなりフォーカスされてきた
 つまり、病巣局在論、森が悪いから、などという単純な問題ではない

 打って一丸となってものごとにあたる
 空気に支配されて、和を乱さないようにみんな頑張る
 突拍子もない理念や、和を乱すものはみんなで出る杭を打って潰す
 物事が失敗したときには、誰が責任を負っているのかわからない
 みんながその空気に流されてやったことになる
 スケープゴートに全ての穢れをなすりつけて内向きに謝罪させ、
 留飲を下げて、感情的な回復を図る
 他者に対する感受性が極めて乏しく、軍事、外交においては
 戦略的な思考ができず、たえず長中期的な思考に流されている

 これらの体制は場合によっては、
 日本を打って一丸とし、ある方向へ導くことに資する、
 役立ってきたが、今ではまずい方向へいってしまっている
 これを変える必要がある、ということを確認するべきで、
 病巣局在論で、森が小泉に代わればよくなる、といった期待は良くない

記者クラブ制度の弊害
 NGO団体、PARC(アジア太平洋資料センター)の記者会見が
 司法クラブで行われ、神保さんは取材を申し込んだが、断られた
 司法クラブは裁判所、検察、法務省記者クラブで、
 クラブに所属していないメディアは入ることができない
 市民側も、記者クラブで会見をやるようではダメ
 場所が無料だからといって記者クラブを利用してしまうと、
 既存のクラブのメディアしか参加せず、そのクラブ内での
 利権によっては伝えたいことが正しく報道されない可能性がある
 NGOの方で、公に開かれた記者会見をしたい場合は、
 すぐ横にある弁護士会館を利用してほしい、そこで会見すれば、
 違うメディア、フリーランス、雑誌、独立系も参加できる
 発信者側に知恵足りなかったために、我々の知る機会が失われた
 そういう知恵をみんなで共有することが必要である

・伝家の宝刀と自主規制
 メディア、教育関連の法案にリスクの高いものが多い
 (盗聴法、個人情報保護法、青少年有害環境基本法など)
 メディアとの利害関係という構造上、
 時の統治権力を守るために、有効に使える建付けになっていて、
 それを変える強い動機づけが、未来永劫起こりにくい法律

 それが悪法であることを報じる行為自体がその法律で規制される、
 あるいは、それを知る術が失われるような法律

 違法と知りつつ、その行為を実行し、逮捕されることが
 悪法廃絶、問題提起の一番の近道かもしれない
 その法律が一番パワフルに効果を発揮するのは、
 伝家の宝刀は抜かず、自主規制を促す状態
 盗聴法も事実上運用されていない。

・情報公開法
 警察は適応除外になってしまっていて、
 その活動内容をチェックすることができない
 中途半端な法律はあるのとないのと、どちらが良いのか
 なければ作れ、という活動が盛り上がるが、
 1度成立した骨抜きの法律を改正することは難しい
 (NPO法や情報公開法など)

・法案修正、オールオアナッシングの交渉
 法律・法案では、ディテールに見える文言でも、本質的なディテールがある
 その文言があるのとないのとで、巨大な利権の移動が生じる
 同じ名前の法案が通ったとしても、ディテールを少し変えるだけで
 中身の違ったもの、リスクの低い法律にできる
 全面反対、法案否決の姿勢では変えることは難しい、
 本質的な文言を少し修正して、リスクを低減するようなロビーイングが有効
 議員へのロビーイング活動を通して説得すれば、伝わる人には伝わる
 議員にはチェック機構は比較的に受け入れられやすい
 官僚は、自らの判断が正しいという前提がある為、受け入れられにくい

・審議会のアリバイ工作と叙勲
 公共事業などの是非について、
 多数可決でほぼシナリオが決定しているにも関わらず、
 反対派を少数参加させることで、議論したというアリバイを作っている
 審議会は2回出ると叙勲で、それが反対派のアリバイ工作員
 インセンティブになっているという
 あまり反対意見を言い過ぎると勲章を逃す、と言われて迎合する
 真に合理的な理念から反対している人と勲章欲しさにアリバイ工作で
 反対している人とを見分けることが難しい
 審議会を過大評価してはいけない

・盗聴法問題
 公明党、大森礼子議員が松尾邦弘法務省刑事局長に対して、

 神保さんの主張は間違っている、TBSが間違った報道をした、
 と追及し、法務省がTBSへの抗議文を作成し、記者クラブへ回した
 案の定、日テレ、読売、フジ、産経が「法務省がTBSに抗議」
 という記事にしたことで、全面的に法務省の主張を報道した。
 当時、TBSの岡田之夫報道制作局長が電車内での痴漢行為で
 逮捕されていたこともあり、釈明報道ができなかった。
 現場レベルでは釈明報道の話も挙がったが、自自公連立与党の中で、
 公明党議員からの抗議に、釈明報道を断念した

・盗聴法の報告義務
 アメリカでは、犯罪関連通話があったかどうか、
 令状1件1件について報告の義務がある
 この報告義務は、その盗聴が犯罪関連通話に対して
 なされたかをチェックするため
 日本では、個別の令状については報告義務がなく、
 全体の件数と犯罪関連通話の件数を報告すればよい
 これでは、個々の案件について、その盗聴が妥当だったかを
 検証する術がないため、盗聴し放題である

<書籍・映画>
なし

<所感>  2024年1月21日
  "ボス交"という言葉を初めて聞いたが、なるほど、小規模ではあるが、
 今までに身に覚えがあり、しっくり来た。その賛否は分かれると思うが、
 自分は賛成寄りだと思う。いわゆる、寄らしむべし、知らしむべからず、
 というやつだが、最近のトランプ復活などのニュースを見るに、
 「あえてぶっ壊す」という理念でトランプ支持を唱える人は少ないように感じる。
 ネタがベタになった、と感じるからだ。
 自分も学生の時分、先生の顔色を窺い、期待に沿うように回答してきたら、
 ベタになってしまった。矯正できたのは社会人になってからの諸先輩方のおかげ。
 マル激に興味を持ち、視聴を続けるのも、そのおかげ。
 感謝感謝。

 印象的な文言は、
 「経世会的なるもの」「ボス交」「料亭政治」
 「人材待望論」「病巣局在論」
 「伝家の宝刀」「自主規制」「実効性」